香取市で発酵トークショーが行われました!(~第14回全国発酵食品サミットinかとり~)
投稿日 2024.12.21
10月26日(土)と27日(日)の二日間、香取市で「第14回全国発酵食品サミットinかとり」が開催されました。
香取市には、古くから伝統として引き継がれる醤油や酒などの醸造文化を始めとする発酵に関する歴史と文化があるとともに、最近では地域内における新たな循環型農業の取り組みなど、発酵技術を活かした循環型社会の実現に向けた試みが行われています。
同イベントは、香取市における発酵の歴史と文化を再確認するとともに、発酵がもたらす様々な効果や可能性について皆で共有し、発酵によるまちづくりを協働で取り組んでいこうと、「全国発酵食品サミットinかとり実行委員会」が主催しました。
26日(土)には、小野川沿いにある与倉屋大土蔵で、音楽とお酒、発酵料理とトークショーのイベント「DOZOdeDOZO」が開催されました。
与倉屋大土蔵は明治22年に醤油醸造処として建築され、終戦近くには兵器庫、戦後は製粉業や米蔵の歴史を持ち、約500畳の広さを誇ります。香取市最古の貴重な建造物であり、現在はイベントやロケ地などに活用されています。
オープニングは、この日のために結成されたバンド「The Sixth Note」が飾り、スタンダードジャズを中心としたナンバーを披露、会場をあたためました。
小川陽子さん
かとり実行委員長
トークショーは3部制で行われ、トークセッションⅠ「発酵が織りなすマリア―ジュ」では、市内の人気イタリアン「リストランテカーザ・アルベラータ」のオーナーシェフ並木常吉氏をゲストに迎えました。
並木シェフは、イタリアの料理店で働いていた際、地産地消が当たり前であった経験から、自分の店でも地産地消にこだわっています。香取市は生産者が豊富なため、常に採れたてを使うことができ、食材の宝庫であると話しました。また、地元の食材を活用したオリジナルの発酵調味料作りにも尽力。香取市がマッシュルームの生産量日本一を誇ることから、マッシュルームを使った並木シェフ特製「ローストビーフの発酵マッシュルームのせ」などの試食もふるまわれました。手間暇かけて作られた、酸味と塩気のきいた発酵マッシュルームとともに常陸牛ローストビーフを味わう一品で、来場者は「美味しい」と口々に感想を漏らしていました。
トークセッションⅡでは、「発酵をいかした土づくりと循環型農業」と題し、芳源マッシュルーム株式会社取締役専務の菅佐原徹哉氏と有限会社ワタミファーム佐原農場の織笠燈弥氏をゲストに迎えました。
芳源マッシュルーム株式会社は、マッシュルームの栽培を始めて今年で58年目。現在、香取市と茨城県、ベトナムで栽培を行っています。馬の敷き藁に鶏糞と石膏、水を混ぜて1次・2次発酵させ、種菌を植え付けて培地を作っており、マッシュルームの生産には発酵が欠かせないことが解説されました。また、最先端のオランダの機械導入のもと、肉厚のブラウンとホワイトの2種を栽培しており、熟練スタッフが一粒ずつ丁寧に手作業で摘み取り、一日約62万5千個を収穫していることが伝えられました。その一方で、国内での消費量が少なく、美味しさを知っていただくためにも、良質なマッシュルームを作っていきたいと抱負を語りました。
次に、ワタミファーム佐原農場の織笠燈弥さんがワタミグループについて紹介。お客様に安心安全の食材を提供したいという想いから2002年、農業事業に参入。現在は全国6箇所に農場を持ち、有機農業を通じて土作り・人作り・地域づくりに励んでいます。2005年開設の佐原農場では主にさつま芋を生産。自然の力を利用して作物を育てる有機農業は土作りが重要で、土中の通気性をよくする緑肥作物の栽培に取り組み、畜糞や牛糞、食物残渣を発酵させて作る堆肥は生物層も豊かで、病害菌の抑制や温室効果ガス削減にも貢献しています。織笠さんは以前、グループ内の居酒屋店長を務めていた経験を持ち、生産のストーリーがわからない中で料理を提供していた当時とは異なり、現在では、お客さんの声が生産者にも伝えられるなど、社内で共有がはかられるようになったことから、食べるお客様の表情まで想像しながら農作物を作ることができていると喜びを語りました。
トークセッションⅢでは、「発酵でおいしく心も体も元気に」と題し、発酵女子の愛称で親しまれている食育プロデューサー中村詩織さんと食育防災アドバイザー子守幸恵さんを迎えました。
発酵のまちで知られる岩手県陸前高田の震災支援を機に、地域活性化応援プロジェクト「発酵女子」を発足。最初に、発酵女子プロデュースによる試食が用意され、ワタミファームの有機さつまいもに発酵バターとオリーブソルトをかけた品、香取産マッシュルームに陸前高田「八木澤商店」の天然もろみをかけた試食がふるまわれ、素材の味を引き立てる味わいに、皆さん頬を緩めていました。
続いて、食育プロデューサーの中村詩織さんが、発酵女子の活動について紹介。日本初の防災機能が付いたレスキューキッチンカーで被災地支援に取り組んでいることが説明されました。
レスキューキッチンカーは、災害時に人々の助けになる様々な機能が備えられており、500人分以上の食糧を積載。災害伝言板、炊き出し用の調理器具、トイレ、テント等も収納されているため、災害が起きた際、支援がくるまでの間、その場で安全に過ごせる拠点となることから、全国でキッチンカーを所有する方々に、1つでも防災機能を付けて貰うよう、働きかけも行っています。また、防災以外にも、食品ロス削減を目的としたフードレスキューの役割を持つことも紹介されました。
活動を共にする食育防災アドバイザーの子守幸恵さんは、石川県珠洲市出身。地震の際、子守さんからのSOSを受け、中村さんは地震発生5日目に支援物資を車に積み、災害支援車両として現地に駆け付けました。現在もレスキューキッチンカーで被災地に通い炊き出し活動を継続中。現地の方からの要望に応えて料理を提供しており、石川県民のソウルフードといわれる鳥野菜味噌をふるまったことなどが紹介されました。訪れる度に「美味しかったよ」、「また来てくれてありがとう」などの声を貰い、レスキューキッチンカーが訪れるのを楽しみに子どもたちや保護者が手伝ってくれることなどをあげ、食を通じた交流の喜びを語りました。
会場では、地元の日本酒試飲コーナーや佐原商工会議所女性会による味噌おでん販売、ワタミファーム佐原農場の農作物と加工品販売なども行われ、来場者は音楽と食、発酵トークを思い思いに味わっていました。