~ドクター・ラオシーの夢うつつ~【その十五】
投稿日 2021.08.01
浪速(なにわ)の研究センターで過ごしたラオシーの6年間は、決して実験、研究のみではありませんでした。浪速の義理人情、敗者のいない泣き笑いの文化、偏屈なヨソ者も“いじり” 漫才にしてしまう言葉の巧みさは、竜宮城のような夢の国であったのです。それでもラオシーは、浪速の玉手箱に封印をして、地元の大学病院で血管外科の専攻医として再出発いたしました。平成の御代(みよ)に入り、医療の最前線は、ずいぶんと世知辛く、殺伐としておりましたが、ラオシーは、悲しく辛い思いも封印して、ひたすら手術室、病棟、救急外来を若いドクターたちと駆けずりまわり、横になれる時間には、百科辞典のような洋書のテキストを舐めるように読みあさりました。ラオシーが、懸命に血管外科の知識と技量を高めている頃、母の容態は、秋の日のつるべ落としのようでした。夕陽の入る病室で、ラオシーの髪をなでながら、“これが四十男の顔か?私は子不幸だね。”と、つぶやいた数日後に亡くなってしまいました。涙も出ないほど悲しい事が、この人生にはあるのだとラオシーは初めて学んだのです。(つづく)
ユーカリ血管クリニック
脈管および透析専門医の経験豊富な医師と親切なスタッフが、アットホームな雰囲気で、皆さまのお悩みに向き合います。頚部・胸腹部・四肢の動静脈の疾患(動脈硬化・下肢静脈瘤・静脈血栓症・リンパ浮腫・透析シャント血管)を専門にしております。日帰り治療として、下肢静脈瘤には、血管内焼灼術、医療用接着剤によるグルー治療や硬化療法を、透析シャントには血管拡張術を、いずれも傷跡がなく痛みの少ないカテーテル治療で行っております。