起立性調節障害(OD)は、思春期前後の小児に多くみられ、自律神経の失調により、起立時に下半身の血管収縮が弱いために心臓に十分な血液が戻らず、血圧が低下し立ちくらみや動悸・失神などが起きる疾患です。
小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン
①立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい。
②立っていると気持ちが悪くなる。ひどくなると倒れる。
③入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる。
④少し動くと動悸あるいは息切れがする。
⑤朝なかなか起きられず午前中調子が悪い。
⑥顔色が青白い。
⑦食欲不振。
⑧臍疝痛(さいせんつう:へその周囲の痛み)をときどき訴える。
⑨倦怠あるいは疲れやすい。
⑩頭痛
⑪乗り物に酔いやすい。
以上の項目の3つ以上、或は2つでも症状が強い時は起立性調節障害を疑います。他の病気ではないことを鑑別診断し、起立試験で、起立直後か蔓延性の低血圧、頻脈、失神などのタイプを判定します。
【対策】
規則正しい生活、朝の光を浴び(セロトニン分泌を促す)夜は暗い環境で休み(睡眠ホルモンのメラトニンを増やす)脳内時計を整え、充分な水分と塩分を摂取し、発酵食品などで腸の環境を整え脳内物質のセロトニンを作り、ゆっくり立ち上がるようにし、運動で筋肉量を増加するようにします。
薬物療法には昇圧剤の内服があります。
漢方的には脾胃気虚が中心の病態と考えられ、漢方薬は、小建中湯は腸内環境を整え消化吸収を良くし、血行循環を安定させ、疲労倦怠感や食欲不振、頭痛、動悸、腹痛、不眠、足の煩熱などの症状を改善します。その他、胃腸機能を整える四君子湯、六君子湯、腹痛には桂枝加芍、立ちくらみ・めまい・頭痛などには苓桂朮甘湯、喉が渇き浮腫むタイプには五苓散、体質改善目的には体力を改善する補中益気湯、頭重感や体のだるさには半夏朮天麻湯、ストレスで胃が痛む場合やニキビなどで皮膚の炎症がある場合は柴胡桂枝湯、興奮気味で夢を多くみる場合には桂枝加竜骨牡蛎湯、心身症的な要素の強い場合には四逆散が用いられます。
聖隷佐倉市民病院 和漢診療科 永嶺 宏一