慢性腎臓病・透析患者さんのリハビリテーション
投稿日 2024.12.09
腎臓病患者さんや透析患者さんが当院で行っているリハビリテーションの一部をご紹介します。
適度な運動は健康への第一歩です。腎臓病患者さんだけではなく、皆さん簡単に取り組める運動ですので体調に合わせて、実践してみてください。
腎臓病患者さんに対してリハビリテーションをする理由とは・・・
従来、腎臓病患者さんに対しては運動することでたんぱく尿が出やすくなるとされ、運動は推奨されていませんでした。しかし近年では、多くの研究成果から、運動を推奨する方針に大きく変わっています。運動でのたんぱく尿の増加は一時的にすぎず、適切な運動を行うことで長期的には腎機能の低下を抑えたり、心臓や血管の病気を予防する効果が認められており、むしろ運動を推奨しています。当院では理学療法士が身体機能を計測し、患者さんの状態に合わせたリハビリテーションを提供しています。
どのような運動が適切か?
主に、有酸素運動とレジスタンストレーニング(いわゆる筋力トレーニング)があります。有酸素運動は呼吸によって酸素を取り込みながら行う全身運動のことです。慢性腎臓病患者さんはジョギングなどではなくウォーキングを推奨します。
筋力トレーニングは1日から2日置きに行うことが望ましいとされています。有酸素運動も筋力トレーニングも両方行うことでより効果的です。
運動メニューの例
①つま先立ちの運動(カーフレイズ)
【回数】10-20回で1セット 1日3セット
- 座った姿勢で、かかとを上げるようにしてつま先立ちになります
- かかとをゆっくり下げ、上げ下げを繰り返します
②スクワット
【回数】5-6回で1セット 1日3セット
- 手すりにつかまり、肩幅よりやや広めに足を広げます
- お尻を引くようにしゃがみこみ、膝が前に出ないように行います
- 膝が過度に曲がらないように注意しましょう
③バランストレーニングとして片脚立ち
【回数】左右ともに1分間で1セット 1日3セット
- 手すりにつかまり、どちらか片方の足を5cm以上浮かせます
- 1分間静止し、片方の足も同様に行います
- 余裕がある場合は手すりなしで行ってみましょう
- 転倒には十分注意しましょう
④有酸素運動
ウォーキングやエルゴメーターがおすすめです。
まずは目標を低めで設定し、徐々に下記の目安を目標にしましょう。
運動の頻度:週3回
運動の時間:20-60分
歩数の目安:5,000-10,000歩
(腎臓リハビリテーションガイドライン2018)
運動時の注意点
- 息を止めて行う・重いものを持つ運動は血圧上昇のリスクなどの理由から推奨されていません。
- 普段よりも血圧が低いとき・高いときは控えめにしましょう。
- 糖尿病の方は空腹時を避けるようにしてください。
- 足腰に不安がある方は医師に相談しましょう。
- 痛みがある場合は運動を中止してください。
運動を習慣にできるコツ
- まずは簡単なことから始める
- 少しの運動(何か1種類でも)から継続してみる
- 毎日の歩数を記録して書き出す
- 家族や友人と共有する
転倒などには十分に気をつけ、無理のない範囲で楽しく行ってみてください。
参考文献
腎臓病と運動シリーズ 慢性腎不全編
腎臓リハビリテーションガイドライン2018
病気がみえるVol8 腎・泌尿器 第2版
ロコモチャレンジ協議会